ビール事業の要素は装置とレシピと税金からなっていると考えていて、装置と建物の概要は概ねできていた、銀行とのやり取りは上野社長がしていたので私にはなんともならなかった、さらに税務署との事前相談のため何度か出かけて行かれていた、日々の売り上げに応じた確定申告による納税状況による審査も行われるようだ。自分の守備範囲を超えているし長年にわたる経営状況によるものなので酒造免許が下りるかどうかは審査による。
数回の税務署との協議の結果が悲惨な結果になった。過去の納税状況から酒造免許の申請について協議を打ち切るとのこと、これ以上この件で相談に来れれても話も出来ないとのことで、申請の受付の段階にも移れない、地ビール事業は立ち消えになった。地ビール事業の為に転職した身にはショックが大きく目標を失った気分になり翌日は休みをもらって一日中部屋に引きこもった。それからの1週間は今後の路線をどうするかで打ち合わせを続けた、このまま一旦投資計画を白紙に戻して何もしないのか、地ビール事業を除く部分を計画変更して投資を続けるかだ、協議の結果一階の宴会場はレストランにリフォームするのは予定通りで、醸造場に予定していた場所に鉄板焼きのバル、さらに露天風呂の改修をして広める方向で固まってきた。上野社長の友人から紹介してもらった建設会社伊藤建設に詳細設計と見積もりを依頼する事になった。
2週間ほどたって建築図面が仕上がってきた、上野社長が確認してGOサインがでた。
鉄板焼きのバルは4人掛けの小上がり席を6席とカウンターに8人、肉と海鮮を中心にした鉄板焼き、生ビールを始めワインも扱うため冷蔵庫/ワインセラーのレイアウトも提案されていた。露天風呂を広めさらに個室露天風呂を5室とし、さらに1階客室に露天風呂を作り客単価を上げる工夫も取り入れられた。これだけ風呂を多くすると温泉の湯量が問題になってくるが、喜代野屋の泉源は専用(他旅館との共用ではない)であったのだが充分な量とは言えなかった、設備会社との協議でやむなく循環型にするしかないとなり、フィルターと加温設備を取り入れ源泉を取り入れながら循環する形式をとることになった。”温泉=源泉掛け流し”が理想であるが湯量の関係からなかなかそうもいかないのが現実だった。