転職して数週間、喜代野屋の問題点が見えてきた、まず客室70ほどの旅館に従業員が多すぎるのだ社長の家族が営業と経理・フロントに5人、事務方(経理)1人、フロント4人(1人は設備兼任)調理長1名調理師4人調理補助2人仲居さんと呼ばれる客室係11人、他に床敷さんとよばれる客室のベットメイク専門のパートさん4~6人とまあこのくらいの人がオフシーズンでも働いていた、ピークシーズンになると更に人数が増える。 レストランを持っていなかったので個人客の夕食は部屋に運んでいたので仲居さんの数もこのくらい必要になっていたようだ。このころの旅館の働き方は分業が当たり前だったので客室の清掃についても専門の会社に外注していた。稼働率が90%を超えるようなシーズンならまだしもオフシーズンでもこの状態だったから推して知るべしである

客室の改装も久しく行われていないようで、お金を出して泊まるには少し古めかしい感じがしていた。地ビール事業を始めるにあたり効率をあげるためレストランスペースを作り個人客はそこに来て食事を取ってもらう形に改めようと計画に盛り込むことになった。
喜代野屋は温泉旅館なので大浴場があった、こちらも改装が行われていないようで古臭く感じた仕切りの全くないカランが並んでいるので何か別の施設のようだった、タイルの上や浴槽の縁と湯口には温泉の泉質のせいで白く厚く固まっていたが、これはこれでなかなかの風情があった。客室の風呂は温泉成分が固着しやすいので大抵の温泉宿では水道水を沸かした湯を配管してると思うが、喜代野屋では温泉を客室にも配管していた、やはりこれは問題を起こしていて、浴槽に温泉成分の水垢を固着させていた。
と、数週間で転職を失敗したかなと思い始めていた。